福井県農業会議は、福井県内の農地を活かした農業者へのサポート、新規就農希望者へのサポートを行っています。

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法人化のメリット・デメリット

1.法人化のメリット(利点)

 法人化をするにあたっては、なぜ法人化をするのか、その意義・目的などについて明確な意志を持たなければなりません。法人化をすることによって補助金を確保しやすいとか、税制上の優遇措置を受けやすいことなど、単純に目先の有利性だけを期待するのではなく、将来を見極めた上で、法人化をきっかけに、経営というものの考え方を正しく理解した上で経営者として自らの経営努力によってメリットは作り出されるものであるといえます。

 法人化のメリットを考える場合は、政策的意義や経営上のメリット、制度上や制度外のメリットといったようにいろいろの分類の仕方がありますが、ここでは制度上のメリットと制度外のメリットといった観点から説明することにいたします。

(1)制度上のメリット

A.税制

事業所得の税金が軽減されます
  • 所得の配分により事業主個人に取得が集中することはありません。
    1. 役員や事業者に対し、報酬、給料等の支払いができます。受け取った所得者は給与所得控除が受けられます。
    2. 法人が個人から借用している土地、建物等に対しては地代、家賃を支払うことになります。
    3. 個人資金の利用に対しては配当金、利息を支払うことができます。
    4. 個人の行う事業を利用した場合には、相応の対価を支払う(資材費等)ことになります。
    5. 役員や従事者に対する退職金は損金として処理ができます。
    6. 退職金制度として中小企業総合事業団の実施している中小企業退職金共済制度、小規模企業共済制度(農事組合法人を除く)に加入し、掛け金は損金とすることができます。
  • 各種引当金や欠損金、剰余金の扱いが法人税法適用で有利となります。
    1. 貸倒引当金、賞与引当金などの各種引当金の設定や退職給与の支払いなどができます。
    2. 一定の条件の下に割増償却や特別償却をすることができます。
    3. 個人資金の利用に対しては配当金、利息を支払うことができます。
  • 事業税が非課税とされる場合があります。  農地所有適格法人である農事組合法人の行う農業経営については事業税が非課税となります。
農地所有適格法人の場合は課税の特典を活用することができます
  • 農用地区域内の農地を農業委員会のあっせんにより取得する場合は譲渡所得特別控除の800万円適用を受けることができます。
  • 上記の場合は不動産取得税や農地等の登録免許税の軽減措置等の特例を受けることができます。
  • 農業経営基盤強化準備金の適用が受けられます。
  • 農業経営改善計画の認定を受けて認定農業者になることで、一定の規模拡大の場合には機械、施設等の割増償却が可能です。

B.制度融資

  • 制度資金の融資限度額が個人より拡大されます。
  • 役員の連帯保証で借入金に対応することができます。

C.社会・労働保険制度

  • 社会・労働保険の加入で雇用労働の導入や雇用の安定化を図ることができます。
  • 労働保険の加入で労働災害や失業の際に補償が行われます。
  • 社会保険料や労働保険料の法人負担により福利厚生の充実が図られ雇用が安定化します。

D.農地所有適格法人の特性

  • 法人として農地の取得や個人の農地を借りて(使用貸借権、賃借権)農業経営を営むことができます。
  • 構成員が農地所有適格法人に対して貸し付けをした小作地については、小作地の所有制限の適用とはなりません。
  • 法人化して認定農業者になると、一定の要件で農業経営基盤強化準備金を積み立て、損金算入することが可能です。

E.その他制度上の特性

  • 法人は法律に基づいて設立されているため、登記事項や経営内容の報告が義務づけられ、金融機関や取引先との信用力が高まり事業の拡大を図ることが容易です。
  • 法人の構成員としての肩書等が得られ、イメージアップにより取引の拡大を図ることができます。

(2)制度外(経営上)のメリット

家計と経営の分離が図られ、経営体として確立されます
  • 家計は法人からの給料等で賄うことになります。
    1. 生活資金の定期化・定額化が図られます。
    2. 定期的、定額的収入により家計の計画化が可能となります。
  • 所得は経営の参加者(構成員・従事者)に対して配分されます。
    1. 労務の対価として給料の支払いが可能です。
    2. 労務の対価等が確実に支払われ、参加者個人の人権が尊重されます。
経営が合理的に運営されます
  • 企業的経営として会計が独立して行われます。
    1. 企業会計の規則で経営内容の把握が正確となります。
    2. 経営内容の明確化と組織的運営により、経営の合理化や改善計画が可能となります。
  • 企業としての進展が可能です。
    1. 経営者としての社会的責任の自覚が確立されます。
    2. 企業としての効率性が追求されます。
    3. 従業員や顧客に対する意識の向上が図られます。
  • 給与等の支払いによって労働意欲が増大することになります。
    1. 家族従事者に対する給与等人件費支払いにより個人財産の確立を図ることができます。
    2. 後継者・女性等の経営参加意識の向上が図られます。
  • 信用の増大により取引の拡大が図られます。
    1. 取引先・量の拡大が可能となります。
  • 雇用の安定的確保を図ることができます。
    1. 雇用契約の明確化により人材確保が容易となります。
    2. 給与等労務の対価の支払いが確立されます。
    3. 休日の確保等労働条件の改善が可能です。
その他
  • 都合の良い時期に決算期を選択できます。
  • 企業経営としての意識が向上し、効率性の追求や従業員、顧客に対する意識の向上など経営の意識改革が始まります。

2.法人化のデメリット(義務・負担)

 現状の農業経営打開を求めて法人化に活路を求めても簡単にうまくいくものではありません。
 法人化は有利な面がある反面、一方では事務処理の繁雑さや金銭面での負担が増加することになります。これらは法人としての当然の義務や負担として発生するものがほとんどですが、これらを十分に熟知して取り組むことが必要です。

A.税制

規模が小さいと税負担等が増加することになります
  • 所得の少ない経営では負担が増大します。個人経営では所得がない場合は所得税等の負担がありませんが、法人の場合は利益がなくても最低限地方税が8万円負担(福井県の場合は、都道府県民税均等割額2万円、市町村民税均等割額6万円)となります。
  • 会計が企業会計規則によるため多少手数を要します。
  • 会計事務や税務申告を専門家等に依頼する場合には経費負担が増加します。

農地の移転と課税関係

法人への農地提供方法 相続税との関係
売り渡した場合
  1. 売り渡しに際し、譲渡所得税が課税されます
  2. 農地の相続問題は解消しますが、法人の出資持分としての相続となります
現物出資した場合
  1. 現物出資の評価額に対し譲渡所得税が課税されます
  2. 農地の相続問題は解消しますが、法人の出資持分としての相続となります
貸付けた場合
  1. 譲渡所得税の課税はありません

B.社会・労働保険制度

社会保険等の加入に当たっては経費の負担が必要となります

C.運営管理費

法人を運営するためには、例えば作業の打ち合わせなどの経費がかかります

D.その他

廃止(解散)する場合には、手続きが複雑となっています
  • 解散に当たっては、法人の財産はすべてを清算することが必要です。
  • 解散から清算完了までは、最低2ヵ月間の期間が必要となります。
  • 解散手続き等に当たり、熟知した指導者が必要です。

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